CSRを取り巻く情勢
 
法学の世界の中では、「経営者たるものは、法令の範囲内において株主の利益を最大化すべき 」が、伝統的な「会社法」の概念です。これに対して、近年、「経営者がCSRを考慮することを積極的に認める方向」が顕著になっています。
 
CSRを取り巻く世界の情勢
資本と経営の分離が顕著なアングロ・サクソン型の企業と異なり、資本と経営が一体化している中小企業が殆どの日本では、中小企業オーナーの考え方一つで、全てが決まると言えます。
気候変動枠組条約がCOP13(第13回締約国会議:2007年)においてオーストラリアが調印・批准したことで、アメリカを除いて、地球規模の環境保全の価値観が共有されるに至ったことが鮮明になりました。この「環境保全」の観点が、我が国のCSRでは重視されています。
アメリカではこの「環境保全」について、科学的に懐疑的に見る傾向が強く、またイギリスでは「二酸化炭素排出権ビジネス」を活発に行い、真に「環境保全」が目的なのか疑わしい面もあります。
 
アメリカの独善性
アメリカでは、ブッシュ政権のようなあからさまな独善性を、オバマ政権は修正しましたが、やはり気候変動枠組条約に対するアメリカの姿勢は独特な感が残りました。そしてトランプ政権になり、アメリカの独善性は増し、パリ協定(2015年12月12日採択)の離脱を表明(2017年6月1日)しました。
※ 実際の離脱には手続きに3~4年を要するので、「口だけ離脱」になる可能性があります。
アメリカでは、「企業は資本家のもの」とする考え方が徹底されており、「資本家 = 株主」への説明責任という観点から、企業のCSRは理解されています。
エンロン事件ワールドコム事件の様に、CSRは企業価値の向上(株式等の資産時価総額の向上)の前に歪められます。
アメリカの特徴的な猟官主義は、政財界のあからさまな癒着構造を呈しています。閣僚や高級官僚が巨大企業の経営陣を兼職するなど、日本では到底考えられません。ブッシュ政権はアジア諸国の経済体制を「Crony Capitalism (縁故重視型資本主義)」と非難していましたが、アジア諸国を非難できるほどの、システムの優位性がアメリカには有りません。
トランプ政権はアメリカ合衆国としてのオバマ政権との継続性を破壊することに血道をあげており、外交の一貫性が失われています。一貫性の欠落はビジネスにおいても非常にマイナスであり、システムとしての劣悪さを示しています。
 
ヨーロッパでのCSR情勢
ヨーロッパでは、企業イメージアップを目的とする小手先の企業活動は、CSRとしては消費者から評価されていません。それはCSRの定義が「社会の持続的発展に対して企業が税金以外の必要なコストを払うこと」「社会の未来に対する投資として必要な企業活動を行うこと」等の明確な概念が確立しているからです。そしてこのような高いレベルのCSRが根付いているのは、その地域の市民の意識の高さと、様々な基準策定を牽引するEUの役割が大きいと考えられます。
後からEU加盟を果たしたり、EU加盟を模索する東欧諸国では、CSRはEU水準のガバナンスやコンプライアンスの問題として理解されています。
EUからのイギリスの離脱(ブレグジット)の決定や、EU構成国からの地域離脱の動きが2016年頃から顕著に見られるようになり、EUの理念も現実の前できしんでいます。
 
日本でのCSR情勢
日本におけるCSRへの取り組みは、意外にも諸外国よりかなり早期に行われています。1970年代から「企業の社会的責任」という文言は散見されるようになりますが、その文脈は「企業の持続的発展」を目標とする中での「イメージ形成」でした。それ故、「慈善活動」や「メセナ」等の形としてCSRが現れていました。このような活動には原資が必要であり、そのような原資が出せるのは大企業のみであるとして、その当時のCSR的な活動は「大企業だけが行う企業活動の一形態」と認識されていました。
近年では「企業不祥事」への対策として、ガバナンスやコンプライアンスと同様の文脈でCSRが語られる傾向が顕著となり、東欧型のCSRと共通する概念が、中小企業まで包含する形で形成されつつあります。更にそこに、「エコロジー」「地球温暖化対策」「自然環境との調和」等のキーワードが加わり、北欧型のCSRへの発展の兆しが顕著となってきています。
 

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